文化庁に対してできること
私も「文化庁長官から『文化芸術に関わる全ての皆様』へのメッセージ」読みました。
【文化芸術に関わる全ての皆様へ】
— ぶんかる【文化庁公式】 (@prmag_bunka) March 27, 2020
新型コロナウイルス感染症の影響により,全国的な文化イベント等について中止,延期等の検討をお願いして1か月余りが経過しています。
文化庁長官から,文化芸術に関わる全ての皆様に向けてメッセージを掲載しました。https://t.co/a101VTrqoj pic.twitter.com/TzUaV3V6lS
もちろん私もこれを読んで励まされたとは一切感じていないしこれを擁護する気はありませんが、安定した役職に就いている人にとって現場の危機感、あるいは既に危機に達していることはわからずこのような意味のないメッセージになったのではないかと思います。一方でドイツのアーティストへのサポートが話題になっていますが、友だちから聞いたところでは応募者が多くサイトが落ちてしまい、現在は一旦応募を締め切って申請は順番待ちになっているようです。
日本でも若手アーティストの支援プログラムが広がればいいとは思いますが、残念ながら海外での研修に特化した制度がメインで、支援している団体もメディア・アート分野では文化庁、吉野石膏美術振興財団、ポーラ美術振興財団あたりに限られてしまっています。吉野石膏とポーラは一年のみ、文化庁の長期研修制度は一年から三年まで選択できますが、二年と三年の研修の採択者はそれぞれ多い年で三人に程度です(統計は文化庁のサイトに公開されています)。
昨年はあいちトリエンナーレの件に対してメディア芸術祭のボイコットをするという動きもあったようですが、ボイコットして公的な制度を利用する人が少なくなることは癒着を招くだけで正しい対応だとは思いません。逆により多くの人が応募してそれをパブリックに発信していくことで議論を加速させるのではないかと私は考えています。もちろん性善説にも聞こえますが、例えば先の文化庁の統計で申請者238人で採択率約20%であるところが申請者2000人になって採択率2%となれば枠の拡大が必要であることが明らかになるでしょう(当然一つ一つの申請書がある程度の質を保たなければいけませんが)。
申請する際には研修のプランやアーティストとしてのポートフォリオの他、海外の受け入れ先からの招待状が必要なため気軽に応募できる制度ではありません。それでもオンラインで海外の学校やコミュニティにコンタクトをとれることを考えれば、例えば20年前と比べてハードルは大きく下がっていると思います。申請書を書くのもコツが必要ですが、そこでアーティスト同士が結束してノウハウを共有していけばいいのではと思っています。よく、公募に際して情報を自分だけのものにして他のアーティストを蹴落とした方がいいのではという発想がありますが、私の経験上では公募中の制度の情報などを共有し合い、協力し合うことで互いのプロポーザルの質も上がり応募する機会も増えて自分にも還元されるようになります。
以前助成金に関する記事を note に書いたとき、在外研修制度に応募したいがアドバイスをもらえないかというメールいただきました。他分野の方だったので直接知り合いを紹介したりはできませんでしたが、海外の団体に問い合わせするときのコツなどについてアドバイスしました。今後、メディア・アートの分野でも助成金の利用が増えて議論を次の段階に持っていけたらうれしいです。
ちなみにメディア・アートで助成金の申請が増えない理由は理解しているつもりで、商業案件の単価が高いのでとれるかどうか分からない、かつ採択されても利用に制限のある助成金の申請をするより仕事をして好きなように使えるお金を蓄えたほうが動きやすいからだと思います。どちらも間違ってはいないと思いますが、二足の草鞋を履いて活動することもできるということを発信していけたらという思いからこういった記事を書いています。
最後に、サムネイルの画像は下記のコードで Hydra から生成しています。