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Processing Community Day Tokyo 2020

Processing Community Day Tokyo 2020

東京で2020年2月1日に開催された Processing Community Day Tokyo (PCD 東京) のレポートです。

前回の第一回 PCD では設立メンバーとして永松さん、中西さんとともに運営を行いました。今回は私がドイツ在住で参加できなかった代わりに10名以上の新たなメンバーを運営に迎え、私は遠隔からのサポートとして参加しました。ですので本レポートも当日の内容よりも運営の目線で開催を振り返ろうと思います。

前回は2018年10月から企画を始めましたが、今回は開催日はそのままで運営の顔合わせは11月と少し遅くなってしまいました。全員で会うのは難しいため、都合が合う人は会場の Yahoo! LODGE にて、その他の方とはスカイプなどで個別ミーティングをしました。前回はほぼ三人で回していたため自然と役割分担できましたが、今回は人数が多くなったためきちんとした役割分担が必要となりました。そこで私がほとんどの方と話をして、その方の長所が生かせるように主に会場担当、 LT(ライトニング・トーク)担当、WS(ワークショップ)担当、デザイン担当等に割り振り、グループごとの初回ミーティングには私も参加させていただきました。というのも、例えば突然 WS の企画を頼まれても何をすればいいかわからないので、細かいタスクの洗い出しを手伝い、同時にグループごとに次回のミーティングのスケジュールを立てる役割を任命することで滞りなくミーティングが繰り返せる環境を作りました。あえてグループのリーダーを立てなかったのは、上下関係のない組織を目指すためです。代わりに、他のグループと連絡を取る必要があれば誰に連絡するべきか誘導することで個の役割を重視しました。時差のため日本の夕方(ドイツでは朝)にミーティングするようにしたため、11月、12月は起床してすぐにミーティングという日が続いていましたが、その後1月頃から当日までは私は Slack で質問に答えたり、リマインダーを投げたり、文面の校正をする程度で済んだのでとてもいいチームができたと思っています。また、アメリカの Processing Foundation とも密に連絡を取って情報共有や他国の PCD へのアイディアの提案などもしています。

私は前回の LT のキュレーションと進行を行ったこともあり、今回は特に LT 担当の takawo さんとレオナさん (Reona396) とお仕事をしました。takawo さんは前回 LT に登壇、レオナさんは WS 講師をしていただき、それから PCD の目指すところに共感いただいて運営に加わっていただきました。LT とはいえ、今回はその他にトーク・セッションとライブ・コーディングを加え、また前回ワールド・カフェとして話し合っていた場をお悩み相談室とリブランドしてこちらはレオナさんが担当しました。ライトニング・トークの内容は前回同様、多様なテーマが出そろいました。

運営でも中心になっている永松歩さんの発表ではクリエイティブ・コーディングを武器としてフリーランサーになるまでの過程を紹介いただきました。アーティストとしてもフリーランサーとしても活躍している永松さんですが、私と同世代であるだけでなく PCD の盟友でもあり非常にリスペクトしてます。中村陽菜さんは卒業制作で Processing と Arduino を用いて絵画を描く作品を発表しており、技術的なことだけでなくコンセプトや過程についてお話しいただきました。安田直樹さんは弾幕プログラミングということで、なんとスライドもブラウザ・ベースで実際に p5.js のスクリプトを動かしながらの発表でした。Taito Otani さんは Max4Live 内で p5.js のスケッチを動かすことで音のビジュアライザとしてだけでなく絵がシンセを動かす作品も制作されています。ライブ・コーディングで活躍されている @moxus さんは WEBGL を用いた自作のツール Kusabi を紹介されていました。「達人の秘儀を作らない」ということばがとても響きました。工藤麻祐子さんは私の大学の先輩でARやプロジェクション・マッピングを精力的に制作されていて、障子を破るインスタレーションの解説をされていました。今後の作品で「ゴミ置き場に泳いでる魚を投影する」など奇抜なアイディアが出ていてこれからも目が離せません。

後半はトーク・セッション「日常的にコードを書いて表現する」で takawo さんがファシリテーターとしてはぅ君さん、nasanaさん、Alminaさんからそれぞれの活動についてお話があった後、続けていくためのコツなどについて話し合いが行われました。このセッションは円滑に行われるように takawo さんがリードしながら他3名と事前に内容を練っていたのを目にしていたので、建設的な内容になり他の参加者にも良い刺激があったようで非常にうれしいです。

ニイノミさんは前回 PCD で NEORT のローンチの告知をしていましたが、その後の活動について紹介がありました。今回の PCD では展示でタッグを組んでいただいたほか、NEORT とは別に PCD の運営としても活躍されていました。

最後にライブ・コーディングでは三組のパフォーマンスがありました。HAUS から 林洋介さんらが開発している p-code をエンジンとしたチャット・プラットフォームで参加型のパフォーマンスがありました。以前久保田晃弘先生から p-code の紹介があり、それ以降私もフォークしてクローンを作っていたのでこのような形でパフォーマンスを観られてよかったです。田所淳さんは言わずと知れたライブ・コーダーで、TidalCycles とシェーダを用いた 100 Fragments のショート・バージョンを披露いただきました。私は既に東京での Algorave とベルリンでの公演で拝見しているのですが、今回 PCD でライブ・コーディングの公募をするにあたり田所さんに絶対にお願いしたいと思い、WS 講師の上にパフォーマンスまで快諾いただけて感謝しています。Shihpin the Livecoder さんも TidalCycles でのパフォーマンスで、技術的なトラブルを乗り越えながら非常に洗練されたテクノ・サウンドをコーティングしていました。Hydra での活動を Twitter で見ていたので TidalCycles でもこれほどのパフォーマンスをされるとは今後も注目です。

ワークショップでは今回は小中学生向けを含め多様なテーマがあり、参加者の皆様にも満足していただけていたようです。

PCD を二回行ってコミュニティを作っていくことの楽しさを実感しました。一回目ではもっと自分も技術的な発表がしたい、WS もしたいと考えていたのですが時間がなかったこともあり裏方に徹しました。その中で気が付いたことは、自分の制作スタイルは発達障害等の多様性に関することやアルゴリズムと他メディアの関係など非常にニッチな分野でありコミュニティにそれを自分から持ち込む必要はなくて、むしろ今までワールドワイドになる前の PCD ボストンに参加したこと、sfpc のワークショップを受けたことなどの経験を日本に持ち帰ってゼロからコミュニティを作ることこそが自分の貢献できる分野だということです。また、PCD 東京の独自色が出始めたのもいいことだと思います。takawo さん、レオナさん、ちにゅりさんと作ったメイン・ビジュアルもですが、例えば VJ シーンなどとは違ったカラーが確実にできてきていると思います。それは PCD はこうあるべきという意味ではなく、自分たちが今までにない美的な価値を作り出せているということ、そして Processing に必ずついてきた「初心者向け」というイメージをいい意味で払拭しながらも助け合いながらおもしろいものを作る文化が根付きつつあるのではないでしょうか。

最後に、これまできちんと運営のクレジットをどこにも載せていなかったのでこの場でメンバーの紹介をしたいと思います。順不同敬称略、基本 Twitter のハンドルネームです。

運営

写真・ストリーミング

キーノート

ワークショップ講師

当日ボランティア

そして、スペシャル・サンクスは今回も Twitter で PCD を盛り上げていただいた deconbatch さん。

また、登壇者の資料やレポートはこちらです。

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