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TRANSCORPOREALITIES 雑感

TRANSCORPOREALITIES 雑感

ケルンのルートヴィヒ美術館にて TRANSCORPOREALITIES 展と Nick Mauss のインスタレーション・パフォーマンスである Treatise on the Veil を観ました。

Treatise on the Veil

展示室には Nick Mauss の鏡のインスタレーション(カバー写真左)の他、Carl Van Vecht­en の写真のコレクションが投影されていたり、部屋の中央には彫刻が展示されています。このスペースと外の大きな展示スペースに計6名のダンサーが立ち替わり入ってきて、伝言ゲームのように展示作品のジェスチャを伝え合いながら踊るのが Treatise on the Veil です。ダンサーは全員ケルンの学生とのことで、動きを見る限りではコンテンポラリー・ダンスやバレエの出身のようです。

ダンサーが展示室にいると空間の意味合いが変わってくるのはおもしろいのですが(特に、鑑賞者の人数よりもダンサーの方が多い時もあり、踊っていない自分の方がその場にふさわしくないような気にさえなってしまう)、どこまでがアート作品としての固有のおもしろさで、どこからがダンス本来の持っているクオリティの寄与なのか考えされられました。ダンサーからするとある程度ストラクチャがあればダンスの即興はいくらでも続けられるし、それをギャラリーや美術館で行うだけで新しい空間が作られて、その中に鑑賞者は意味を見出すことができる。しかし Tino Sehgal や Maria Hassabi などが既に多くの作品を作っているので作品のコンセプトとしての新鮮さはあまり感じられませんでした。

Dancer of the Year

Dancer of the Year は Trajal Harrell のソロ・パフォーマンスで、ドイツの tanz 誌のダンサー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたことから着想を得たそうです。TRANSCORPOREALITIES 展ではこれまで Harrell が用いてきたパソコンやオブジェなどを展示しており、Dancer of the Year Shop というタイトルで販売しているとのこと。パフォーマンスは展示作品とは別にこれまでのダンス作品をベースに振付されているようで、別室の小さなシアターで行われました。レッド・カーペットの上で10ユーロ札がびっしりと印刷された衣装だったりスカートだったりと衣装をいくつも変えながら踊るのですが、舞踏に精通していることもありダンスは何かにとり憑かれたり笑い泣きしたりととても感情的でした。最後のダンスでは観客を指さしながら感謝を伝えているようで、拍手が起きてからも観客の中に入って頭を下げたり見送りをしていたのが印象的でした。(2019/11/30 追記)

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